【柳沢有紀夫の視点】「世界の大学ランキング」3つを徹底比較

本を読む学生

以前「世界の住みやすい都市ランキング」について書きましたが、それ以上に日本の順位が低いのが「世界の大学ランキング」の類です。でもこれって信じられるものなのでしょうか?

こんにちは。海外書き人クラブお世話係、国際比較文化ジャーナリストの柳沢有紀夫です。今回は「世界のベスト大学ランキング」3つを比較しながら、あれこれ考えてみたいと思います。

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1 「タイムス・ハイヤー・エデュケーション」のランキング

「世界の大学ランキング」としておそらくいちばん有名なのは、イギリスの高等教育専門誌である「タイムス・ハイヤー・エデュケーション」のものでしょう。何はともあれ2016-2017版のトップテンを見てみましょう。

  • 1位 オックスフォード大学(英)
  • 2位 カリフォルニア工科大学(米)
  • 3位 スタンフォード大学(米)
  • 4位 ケンブリッジ大学(英)
  • 5位 マサチューセッツ工科大学(米)
  • 6位 ハーバード大学(米)
  • 7位 プリンストン大学(米)
  • 8位 インペリアル・カレッジ・ロンドン(英)
  • 9位 チューリッヒ工科大学(スイス)
  • 10位 (同率)カリフォルニア大学バークレー校(米)
  • 10位 (同率)シカゴ大学(米)

ものの見事に日本の大学は入っていません。では100位以内に入っている日本の大学を見てみましょう。

  • 39位 東京大学
  • 91位 京都大学

それ以降は201-250位に東北大学、251-300位に東京工業大学、大阪大学がランクインしています。とはいえ「惨敗」というイメージが強いのではないでしょうか。

2 「カカレリ・サイモンズ」のランキング

もう一つ「世界の大学ランキング」で有名なのに「カカレリ・サイモンズ」があります。同じくイギリスに本部を置く教育と留学を専門に扱う会社です。こちらの2016-2017版のトップテンを見てみましょう。

  • 1位 マサチューセッツ工科大学(米)
  • 2位 スタンフォード大学(米)
  • 3位 ハーバード大学(米)
  • 4位 ケンブリッジ大学(英)
  • 5位 カリフォルニア工科大学(米)
  • 6位 オックスフォード大学(英)
  • 7位 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(英)
  • 8位 チューリッヒ工科大学(スイス)
  • 9位 インペリアル・カレッジ・ロンドン(英)
  • 10位 シカゴ大学(米)

実にトップ10(「タイムス・ハイヤー・エデュケーション」は同率10位が2校あるのでトップ11ですが)のうち、9校が重なっています。こちらも日本の大学でトップ10に入っているのはゼロ。トップ100は以下の通りです。

  • 34位 東京大学
  • 37位 京都大学
  • 56位 東京工業大学
  • 63位(同率) 大阪大学
  • 73位 東北大学

ちなみに私の母校が同率216位。そして次男が卒業して長女が在学中の大学が同率51位、長男が卒業した大学が336位。というわけで私は家庭の中で肩身が狭い思いをしている……かというと、そうでもないです。

というのは「そんなもん一つの選考基準にすぎないだろう」と思うからです。たとえ「タイムス・ハイヤー・エデュケーション」と「カカレリ・サイモンズ」のトップ10のうちは9校が重なっていようとも。日本の大学で上位にランキングされている大学名がほぼ同じであろうとも。

両調査の評価基準を見てみると……

「タイムス・ハイヤー・エデュケーション」では以下のような基準で評価しています。かったるいかもしれないので、ざっと読み飛ばしていただいても構いません。

  • 【教育力】。内訳は〈研究者による相互評価、教員あたりの学部学生数、学士授与者数あたりの博士授与者数(つまり大学卒業後に大学院に進み修士・博士課程を修了する人がどれくらいいるか)、教員あたりの博士授与数、教員の平均収入〉で全体の30パーセント。
  • 【論文引用】。〈所属する研究者の論文がどれだけ引用されたか〉で32.5パーセント。
  • 【研究】。〈研究者による相互評価、教員一人あたりの研究収入、教員一人あたりの論文数、研究収入中の公的資金の割合〉で30パーセント。
  • 【国際化】。〈外国人教員比率、外国人学生比率〉で5パーセント。
  • 【産学連携】。〈教員一人当たりの産学連携比率〉で2.5パーセント。

以上の合計で100パーセントになります。

さてここからちゃんと読んでください。一見してわかるのが、「研究とその成果である論文に重きが置かれている」という点です。【研究】と【論文引用】を合わせると、62.5パーセント。【産学連携】も言ってみれば研究が産業に用いられる割合ですから、これを合わせると65パーセント。じつは全体の3分の2近くが研究関係で占められています。

次に「カカレリ・サイモンズ」の基準を見てみましょう。

  • 【各国の研究者からの評価】40パーセント。
  • 【雇用者からの評価】10パーセント。
  • 【学生一人あたりの教員数】20パーセント。
  • 【教員一人あたりの論文の被引用数】20パーセント。
  • 【外国人教員数】5パーセント。
  • 【留学生数】5パーセント。

「カカレリ・サイモンズ」の基準でも【各国の学者からの評価】と【教員一人あたりの論文の被引用数】という「研究がらみ」が60パーセントを占めています。

ここで特に注目したいのは「論文」です。論文の数などはデータベースを利用して調べますが、そもそもそのデータベースに載っている論文の多くは英語です。そうなると、英語圏の大学が有利になります。もちろん日本語やフランス語など、英語以外の言葉を母語にしている人でも英語で論文を書くことはあります。特に世界的に評価されたい研究ではそうです。でも母語ではないですから書くスピードは限られますし、またどのような論文でも英語で書くネイティブスピーカーたちとは、自ずと差が出ます。

つまり「論文」という評価基準があれば、英語圏の大学が圧倒的に優位です。事実、非英語圏にあって両調査のトップ10に入っているのは、スイスのチューリッヒ工科大学だけです。

さらに「論文」という評価基準があると、非英語圏の文系に強い大学は圧倒的に不利です。偏差値的には東京工業大学と同じくらい高いけど文系の学部しかない一橋大学がどちらのランキングにも入っていないのはそのためです。

つまり「タイムス・ハイヤー・エデュケーション」と「カカレリ・サイモンズ」によるランキングは、いずれも「理系の研究機関としての大学」の順位付けです。

大学は研究機関なのか教育機関なのか

でも大学の役割は「研究機関」だけではありません。大学側にとっては研究が第一なのかもしれませんが、消費者(つまり学生)にとっては必ずしもそうではありません。

学生(特に大学院生ではなく学部生。特に文系)が大学に求めるものは、まず「教育」です。人によっては「サークル活動で異性と仲良くなること」だったり「4年間プラプラすること」だったりしますが、建前としては勉強をしに大学に行きます。ゼミで書く卒業論文は研究と言えますが、そのゼミも一般教養科目も含め、様々な知識を得て、知恵をつける場。それが学生にとっての大学です。

たとえば、「研究成果はものすごいのだが、話し下手で、講義では何を言っているのかまったくわからない先生」と「研究成果はすごくないが、話すのが上手く、講義の内容がすいすいと頭に入ってくる先生」とどちらが優れた先生か。多くの大学生は後者と答えるでしょう。

なぜなら大多数の学生にとって、大学は「研究機関」ではないからです。彼らにとって大学とは、「社会に出てから役立つ知識や知恵を身につけるところ」です。つまり「教育機関」です。「就職前の知的職業訓練機関」と呼んでもいいかもしれません。

「大学は研究がメインで、学生たちの教育は二の次」などと言ったら、多くの学生、そして多額の授業料を払っている保護者は頭に来るはずです。「年間何十万円もの授業料を払っているのに何事だ」と。私立の小学校、中学校、高校でこんなことを言ったら、保護者からどんな反応が来るか明白です。

学生や保護者が大学に求めているのは「研究」ではなく、「教育」と「就職力」。そういう基準で考えると日本の一流と言われる大学は、いい線を行っているのではないでしょか。

そんなことを考えていたら、両者とは別のユニークな世界大学ランキングを見つけました。

3 パリ国立高等鉱業学校(The École des Mines de Paris

ウェブサイトの説明によると、このランキングでは基本的には「卒業生の進路(就職)状況」に注目しようと考えたそうです。たとえば「卒業生の給料」、「管理職になっている卒業生の数」、「起業した卒業生の数」などで、その大学の教育の質がわかるのではないかとしています。なるほど。

ただ、「給料」は住んでいる国の生活費によっても変わるし、「管理職」の概念は会社によって違うし、「起業」した会社の各国のデータが揃っていないなどの理由で、これらの基準での順位付けはむずかしいとしています。大風呂敷を広げる割には、後でたくさんの言い訳がつくあたり、とても他人とは思えません。

そこでこのパリ国立高等鉱業学校、乱暴ですが恐ろしくわかりやすい基準を見つけました。それはアメリカの経済誌『フォーチュン』が毎年発表している「世界の大企業五〇〇社ランキング」に注目し、各社のCEOの出身大学を数えたわけです(ただし大学と大学院が違うといった場合は半分の〇・五ポイントずつ、振り分けられます)。

ではパリ国立高等鉱業学校のサイトに載っているランキングを見てみましょう(最新版が2009年と少々古いですが……)。

  • 1位 東京大学
  • 2位 ハーバード大学(米)
  • 3位 スタンフォード大学
  • 4位 早稲田大学
  • 5位 ソウル大学
  • 6位 HEC(フランス)
  • 7位(同率) デューク大学(米)
  • 8位(同率) オックスフォード大学(英)
  • 9位(同率) ペルシルヴァニア大学
  • 10位 ENA(フランス)

それ以降も日本の大学は

  • 11位(同率) 慶應義塾大学
  • 11位(同率) 京都大学
  • 20位(同率) 中央大学
  • 20位(同率) 大阪大学

なんと20位までの間に6校も占めています。

日本の大学間の順位に不満を持たれる方もいるでしょう。「パリ国立高等鉱業学校」自身が認めているとおり、CEOの数だけで卒業生の出来を決めるのも、かなり乱暴です。また卒業生数が多い大学ほど有利になるなど、問題点を挙げればきりはありませんが、「卒業生の進路によって教育力を測定しよう」という考え方は評価できます。

ただ、ここで言いたいのは、「パリ国立高等鉱業学校」のランキングのほうが正しいということでもなければ、これを見て溜飲を下げようということでもありません。

人口数とか売上高といった「絶対的な基準」がない限り、ランキングなどというものは「何を基準にするか」そして「誰が基準をつくるか」によって変わるということを理解していただきたいのです。誰か一人のデータをうのみにするのは危険。大切なのは様々なデータを集めつつ、「自分の頭で考えること」です。

他人の土俵で相撲を取る必要はないのです。

【こんなに違う! 「世界一住みやすい都市ベスト10」2つを徹底比較】もぜひご覧ください。

 

【まとめ】

  1. ランキングは「誰が何を基準にするか」によって変わる
  2. 多くの「世界の大学ランキング」は「教育機関」ではなく、「研究機関」としてのランキング
  3. 大切なのは一つのデータをうのみにすることでなく、自分の頭で考えること

 

【文:海外書き人クラブ 柳沢有紀夫】

(「海外在住ライターを使ってみたい」と思われている方。「海外在住ライターになりたいと思われている方。耳寄りな情報があります。ぜひこのページの下のほうまでご覧ください)



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