【死語辞典】(80年代まとめ)ア~サ行

海外書き人クラブがお届けする『死語辞典』。「1980年代」に流行った死語とは? そのうち「ア~サ行」から始まるものの意味と用例・用法をまとめました。

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【ア行から始まる死語】

アッシー/アッシーくん

足代わりとして、便利に使える男」のこと。「足」代わりだから「アッシー」。

たとえば夜遊びして、終電を逃したか電車で帰りたくなく、でもタクシー代はケチりたいか、タクシーがなかなかつかまらないとき、電話一本すれば自家用車で駆けつけて、家まで何ごともなく送り届けてくれる男のこと。恋人ではなく、肉体関係もない。でも「そのうちそんな気になるかも。ウフフ❤」という雰囲気はさりげなくふりまいておいて、でも「そのうち」が来たためしは一度たりとてないとか。

それでも、けなげなアッシーくん。もしかしたら彼らはM男だったのかもしれない。または本人に「アッシー」扱いされているという自覚がなかったのか(涙)

用法は「アンタ、あんな男とつきあってんの?」「冗談やめてよ。あんなのただのアッシーよ」とか。

【類義語】 メッシ― ミツグくん

【関連語】 キープくん  タカビー

あちゃ~/あっちゃ~

ブルース・リーの雄たけび声……それは「アチョー!」ね。と思われがちだけど、じつは「アター!」なんだってご存知でした?

などという、どうでもいいミニ知識は置いておいて。

「あちゃ~」または「あっちゃ~」は、失敗したことを表わす間投詞「あーあ」「ありゃりゃ~」「こりゃ、こまったなあ~」に近い

用例は「あっちゃ~。やってもうた!」。

アニマル

見境なく、可能であればどんな女性とでも、ある種の接触行為をしたがる男のこと。「野獣」ほど凶暴ではなく、隙を見つけて現れるハイエナ的な感じか。

用例は「ええーっ。友だちの母親と? ったく、アイツはアニマルだからなあ~」。

タレントの加藤紗里さんが元交際相手と言われる男性芸人を指して、「アイツはおさるさんだから、誰とでもやりたがる」とみたいなことを言っている記事を読んで、なんだかこのフレーズを懐かしく思い出した。

ありがほ/ありがぽ/ありがぴゅー/ありが十匹

すべて「ありがとう」の意味。この中で感謝の気持ちが一番強いのは……ないね、一つも。

基本的には「真面目に感謝の意図を伝えるのも照れくさい」というシチュエーションで使われた。用例は「あっ、ペン貸してくれる?」「いいよ」「ありがぽ」とか。間違っても「あなたのこと、本当に好きだった。今までいっしょにいてくれてありがぴゅー」といった場面で使ってはいけない。

ありがほ」「ありがぽ」「ありがぴゅー」は単に語尾を変えただけ。「ありが十匹」は「とう」⇒「十」⇒「十匹」。こちらは主に小学生が使っていた。もしかしたらバブルの時代は大学生よりも小学生のほうが論理的思考をしていたのかもしれない。

【類義語】 サンキュー・ベリマッチョ

イマ三百

「イマイチ」にも程遠いくらいダメな様子。なぜ三百なのかは不明。おそらく単に勢いがいいからだと思われる。昔の八百屋さんが「はい。おつり二百万円」と余分な「万」をつけたのと同じように、とにかく勢いだけはある。

用例は「徹夜で考えればいいってもんじゃないよ。そのアイディア、イマ三百だな」。……どっちにしても否定するなら300倍に増量しないでほしいものだ。

イベコン

イベント・コンパニオン」の略。モーターショーなどで、車の横で「カメラ小僧」に笑顔を振りまく女性たち。

大手広告代理店のセールスプロモーション担当者とか、一流企業のマーケティング担当といった「ヤンエグ」と出会う可能性が高いとかで、女子大生には人気の高かったアルバイト。

一方、「ヤンエグ」のほうは「つまみ食い」の相手くらいにしか思っていないという悲しい現実も。「アッシー」「メッシ―」なんて言葉があったのに、おいしい思いをしていた野郎どもがいたと考えると、筆者としては非常に悔しい。

髪型は「ワンレン」が基本。衣装はもちろん「ボディコン」。

【関連語】 ワンレン  ボディコン

うれピー

酒井法子さんがアイドル時代に多用した「のりピー語」の一つ。「うれしい」の意味。他に「たのピー」「マンモスうれピー」「いただきマンモス」などがある。

用例は「やっと試験が終わったぁ。マンモスうれピー」とか。

ABCD

第二次世界大戦前のアメリカ、イギリス、中国、オランダによる包囲網ではない。Aはキス、Bはペッティング(そういや、「ペッティング」も使わなくなったな。若いお友だちに解説すると、男性のある器官を女性のある器官に出し入れすることなく、触ったり舐めたりするだけでお互い気持ちよくなること)、Cは出し入れすることで、Dは妊娠を示す隠語

用例は「ごめん。Bまでならいいけど、Cはちょっと……」。

そういえば沖田浩之さんの歌で「ABCでE気持ち」云々という歌詞があった。

エスケープする

「バックれる」「スネークアウトする」「フェイドアウトする」「トンズラする」「フケる」などと同様に、「逃げる」という意味。不良高校生が使っていた「フケる」同様に、「授業から抜け出す」場合に使われることが多かった。いつまでも高校生みたいな言葉は使っていられないと思った大学生たちが、使い始めたのだと思う。

用法は「3限目の哲学概論、どうする?」「わりぃけど、オレ、エスケープするわ」とか。

同じ意味の「パス(する)」は、まだ使われているかな?

【関連語】 バックれる スネークアウトする フェイドアウトする トンズラする フケる

おじゃま虫

「邪魔」なこと。または「邪魔な人」

たとえば「えっ? もしかして二人、つきあってんの? ……ってことは、ワタシってば、おじゃま虫?」とか。

単に「お邪魔?」ではなくわざわざ「虫」をつけたのは、おそらく「まるで服につく虫のように、必要もないのにくっついていて邪魔くさい」というニュアンスを込めたかったのだと思われる。

オタッキー

「オタク」のこと。またはその形容詞形

「オタク」は暗いイメージがあり、外見的にもある種の近寄りがたさ、端的に言えば「完全に別世界の人」感を備えていた。一方、「オタッキー」にはもう少し現実社会との融和が見られたというか、外見的には普通なのに、意外とオタクな部分があるような場合に用いられたように感じられる。あくまでも「感じ」で、そこまで厳密に使いわけていた人ばかりではないかもしれないが……。

ただ真の「オタク」道を追及している人たちから見ると、境界域の「オタッキー」は「世間にすり寄った、オタクの風上にも置けない軟弱者」というイメージだったのかもしれない。よってオタク自身たちに支持されることなく、オタッキーという言葉は使われなくなったのだと思われる。

たとえば「初恋の相手」について話しているときに、「オレの初恋の相手はナウシカだな」と平然とうそぶき、その後、ナウシカのかわいさについて力説するような相手に対して、「おっ、おまえ、オタッキーだったのかよ」とか。

当然「初恋の相手はサリーちゃん」「初恋の相手はすみれちゃん」の場合も、「おっ、おまえ、オタッキーだったのかよ」と言われるが、「初恋の相手はよし子ちゃん」の場合は、爆笑を巻き起こすか何ごともなかったように無視されるか、とにかく別の反応が帰ってきた。

お茶する

「ええっと……正座して、でっけえ茶碗を三回まわしてから、苦いお茶一気に飲み干して、『結構なお手並みでした』とか言わなきゃいけないんだっけ?」などとドギマギする必要はまったくない。「お茶する」とは茶道とはまったく関係なく、「喫茶店に行く」または「喫茶店やカフェに行ってコーヒーや紅茶を飲みながらおしゃべりする」という意味

友だち同士で「授業終わったらお茶しない?」と誘いあったりする。

また「ねえねえ、カノジョ、お茶しない?」は、当時のナンパの決まり文句だった。この言葉、私も何度も練習したが、小心者ゆえ一度も使ったことがない。

ちなみに関西の一部地域では「茶~しばく(チャーシバク)」といったとか。「しばく」というのは「しばくぞ、われっ!」の「しばく」で、つまりは「叩く」とか「暴力に訴える」というのが原義だと思うのだが……。その後「牛しばく(→吉野家に行く)」「鳥しばく(→ケンタッキーフライドチキンに行く)」「ネズミしばく(→某テーマパークに行く)」のような使い方をされたが、標準語で「牛する」「鳥する」「ネズミする」といった言い方はされなかったと思う。

それから「お茶しない?」と言うのに、飲むのは紅茶でなくてコーヒーであることがほとんどなのはなぜだろうと、当時すごく気になっていた。そんな変人、モテるわけないよね。

【関連語】 だべる

おてまみ

お手紙」の変形で、意味は同じ。正直言って、「おてがみ」より言いにくいだけだけど、わざと言いにくくするのも流行ったりした。

基本的には「どぼじで?」とか使う三枚目キャラ女子が多用した言葉。

【関連語】 とぼじで? おベンピ?

おベンピ?

「ああ、便秘してるか訊いてるのね?」と思ったあなた。そんなこと面と向かって訊く人はお医者さん以外いません。

「お元気?」を変化させたもので、意味も同じ。母音がすべて同じだからだと思われる。用例は「ひさしぶり~」「ホント、ひさしぶり」「おベンピ?」「ベンピベンピ」。……今、振り返ってもピンクの小粒を投げつけたくなる。

使うときは必ずまず「お」をつけた「ベンピ」から始まる。コンサートで「みんなベンピ~?」と観客に問いかけるアーティストはたぶんいなかった。

【関連語】 とぼじで? おてまみ

【カ行から始まる死語】

カラス族

2000年代以降では青森のねぶた祭りに出没して、乱暴狼藉を働く者たちを指すことが多いようだが、ここで言う「カラス族」とは、全身、真っ黒な服に身を固めるというファッションをした人たちのこと。

それまで「黒」は喪服とか学生服のイメージで避けられていたのに、この頃から積極的に着られるようになったのだね。美大生とか服飾関係の専門学校生に多かった。

【関連語】 DCブランド

かわゆい

「かわいい」を変化させたもの。意味も同じ

女の子が「かわいいと自分で言いきってしまうと、押しつけがましくなるかな」という配慮がある場合に用いるが、「そういう配慮をしているワタシ」というのがプンプンと感じられる言葉。

用法は「そんなワタシって、結構かわゆいと思うんだよね」。……全然っ!

男が「かわゆい」を用いることはほぼ皆無。

キープくん

決して有力な存在ではないが、本命が現れるまで、または本命に振り向いてもらえるようになるまで、とりあえず確保しておく男のこと。明らかにありえないということではないのだが、「この人がいい」とも言い切れないという中途半端な存在。

用法は「見たわよ見たわよ。昨日、男と歩いてたでしょう? カオリ、男の趣味、変わったね」「うーん。っていうか、あれはただのキープくんだし」。

語源はおそらく飲み屋でのウイスキーなどの「ボトルキープ」だと思われる。

男女立場が逆の「キープちゃん」という言い回しは、少なくとも一般的にはなかった。しかしこの頃は男がマゾ、女がサドだったのかね?

【関連語】 アッシ― メッシ― ミツグくん タカビー

究極の/至高の

厳密に言えば死語ではないが、当時よく使われていた言葉ということで紹介しよう。

雁屋哲さん原作・花咲アキラ作画の漫画『美味しんぼ』(1983年~)で有名になったフレーズ。もちろんいずれも「非常に良い様」を示す言葉ではあるが、むしろ「何にでも知ったかぶりしてウンチクを傾けるおバカさん」ごっこをするときに用いられた

用例は「おお、その音、この匂い。まさに究極のオナラ!」とか、「うむ、この熟れきったドリアンのような匂い。これぞ至高の徹夜明けの靴下!」とか。

どこまでひねくれてたんだよ、当時のオレたち!

【関連語】 まったりとしていてそのうえコクがあり、それでいてあっさりとなめらかな

教育的指導

完全に使われなくなったわけではないが、80年代当時流行った言葉として紹介したい。

もともとは柔道用語で、戦意を見せない選手に対して、審判が両腕を胸の前で2回ほどぐるぐる回して、指差す。1984年のロサンゼルスオリンピックの際に、『笑っていいとも』に出演していたゲージツ家の篠原勝之さんが、この動きをしたあと「教育的指導!」と言うネタを披露して広まっていったものだと思われる。

場違いな下ネタ、不穏当な発言をした者に対して、用いる表現。……この死語辞典もグーグル先生から「教育的指導」を受けないように気をつけたい。

ギンギン

とっても冷えていること。または男のある部分がいつもにも増して硬くなっている様子

こちらの意味が出てきたせいで、「とっても冷えている」という意味では使いにくくなってしまったようで、そういう場合は「キンキン冷える」が用いられるようになった。

用例は「あんなビキニ見せられたら、思わずギンギンになっちゃうよな」。

【類義語】 ビンビン モッコリする テントを張る

グデングデン/グテングテン

いずれも「泥酔状態」のこと。「ぐでんぐでん」「ぐてんぐてん」とひらがなで表記することも。萩原健一さんの曲のタイトルも「ぐでんぐでん」。

用例は「あーあ。昨日グデングデンに酔っぱらって、知らない男の家で目を覚ましちゃったよ」。

元はドイツ語で「良い」(グッド)を意味する「グーテン」から来た言葉。「酔い」→「良い」→「グーテン」→「グテングテン」。……ちなみに、これは酔っ払いのホラです。すみません。

【類語】 ベロンベロン ヘベレケ

グラッチェ、グラッチェ

「 グラッチェ」はイタリア語で「ありがとう」の意味。それを重ねたもの。言ってみれば「あっもサンキュー、サンキュー」の言い換え。

ただなんでイタリア語なのかね? まあ、確かにフランス語の「メルシー、メルシー」とか、ドイツ語の「ダンケシェン、ダンケシェン」とか、スペイン語の「グラシアス、グラシアス」よりはず~っとカル~い雰囲気は出せる。

調子いい男「わりい。次の講義、代返しといてくれる?」

こき使われ男「またかよ」

調子いい男「今度なんかおごるから。 グラッチェ、グラッチェ

この場合も「今度」というのがなかなか来ないのは言うまでもない。

【関連語】 ありがほ ありがぽ ありがぴゅー ありが十匹

クリスマスケーキ

クリスマスケーキは12月25日までは高値で取引されるが、翌26日になると価格が大暴落して、安値で投げ売りされる(または廃棄処分される)。このことから「25歳を過ぎた女性も婚期を逃したので、いい相手が見つからず、妥協するしかない」という状態の例えとして用いられた。用例は「女はクリスマスケーキ」。

25歳で「婚期を逃した」というのは、現代の常識からするといくらなんでも早すると感じられると思うが、当時はまだ「4大(4年制大学)に行くと、現役で留年せずに卒業しても22歳。それから社会に出ていては今期を逃すから2年制の短大に行きなさい」と親から言われる子がまだかなりいた時代。同様の理由で「息子はいいけど娘には浪人させない」という親もそれなりにいた。

女はクリスマスケーキ」もそういう時代背景から生まれた言葉。

ケバい/ケバケバ

「ケバい」は「化粧が濃すぎて、派手すぎ」の意味。「ケバケバ」はその名詞形で、「化粧が濃すぎて、派手すぎな状態。またはその女性」。基本的には女性を指す言葉で、否定的な意味で使われた。

語源はおそらく「毛羽立つ」だと思われる。ファンデーションが厚塗り過ぎて、まるで毛羽立っているように見える状態だということを表現した言葉ではないだろうか。

用例は「この間の合コンに来たマサミちゃん。かわいいんだけど、ちょっとケバいよねえ」とか、「お前、あんなケバケバが趣味だったの?」とか。一般的な傾向にすぎないが、この頃の女子大生は、「女子大」に通っている子が化粧に気合いが入りすぎてケバく、「共学の大学」に通っている子はナチュラルメイクが多かったような気がする。

「ナンパした子とホテルに入ったらオカマちゃんだった」という恐怖体験を実際にした友だちはいないが、「ナンパした子とホテルで過ごした翌朝、背格好も声も同じなのに、まったく違う顔の女の子がベッドに寝ていた」という衝撃体験をした知り合いは何人かいる。「きれいに見せたい」という女性の気持ちはわかるし、女性がきれいなのは男としてもうれしかったりもするけど、原型をとどめないほどのお化粧はどうかと思う。

元気する

基本的には「元気してる~っ?」「元気してた~っ?」と疑問形で使う。いずれも久しぶりに会ったときに使うあいさつ。「元気」という状態をあらわす名詞に「する」という動詞をつけたもの(文法的にはアントニオ猪木さんの「元気ですか~っ?」とか忌野清志郎さんの「元気だったか~い?」が正しい)。

意味的にはどちらも「久しぶり~っ」だが、「元気してる~っ?」よりも「元気してた~っ?」のほうが「会っていない月日」が長いニュアンスがある。

中学や高校時代のあまり親しくなかった友人から何年かぶりに、「あっ、○○だけど。元気している~っ?」と妙に馴れ馴れしい口調で電話があった場合は、何らかの勧誘または販売目的である場合がほとんどだった。

ご休憩する

「休憩する」は「一休みする」ことだが、「ご休憩する」となると「(基本的には)男と女が気持ちよくなる行為をすること」という意味になる。ラブホテルの料金表に「ご休憩○○○○円~ ご宿泊○○○○円~」などと書かれていたことから。

用法は「疲れたから、ちょっとご休憩して行こうか」とか。たいていの場合、その10分後には、「疲れた」といった本人が大ハッスルしていた。

【類義語】 ニャンニャンする パッコンパッコンする ズッコンズッコンする チョメチョメする よろしくする

「ここはどこ? 私は誰?」

パニックになっていることを表現するフレーズ。というよりも、パニックになっているフリをして、その場をごまかそうというときに、より多く用いられた。テレビのサスペンスドラマなどで、なんらかの事故に遭って記憶喪失になった人が病院で目を覚ました際に最初に発する決まり文句を転用したもの。

用法は「私、もうどうしていいかわからなくって、『ここはどこ? 私は誰?』ってカンジ」とか。または「あっ、オレ今、何かヤバいこと言った? ここはどこ? 私は誰?」とか。

また変化形である「ここは誰? 私はどこ?」というフレーズも用いられた。「どこ」と「誰」を入れ替えることで意味不明のフレーズにし、「ここはどこ? 私は誰?」よりも、さらに混乱をきたしてパニックを起こしている様を表現しようとした。

ゴックン/生唾ゴックン

モノを飲みこむときの擬音語である「ゴックン」だが、この場合「きれいな女性やその水着姿や裸を見て、生唾を飲みこむくらいびっくりした」くらいの意味。

用例は「思わずゴックンしちゃうくらい、きれいな子だった」とか。

【類義語】 ジュル

困ったちゃん

困った人」のこと。本人が困惑しているのではなく、「まわりを困らせる人」のこと。ルールとか常識、マナーを知らない人。「空気が読めない人」の意味でもある

用法は、「あの子、ホントに困ったちゃんなのよねー」とか。「ボインちゃん」などと同じく、ある言葉に「ちゃん」をつけることで、ある種の人たちを指すという用法。

飴に「ちゃん」をつけて「飴ちゃん」と呼ぶ関西弁とはちょっと違うかもしれない。

「コマネチ!」

ビートたけしさんのツービート時代のギャグ。

コマネチとはルーマニアの体操選手で「白い妖精」と呼ばれたナディア・コマネチさんのこと。そのハイレグのレオタード姿をヒントにしたギャグ。両手を両脚の付け根に沿ってハイレグのレオタードくらいの角度で動かし、「コマネチ!」と言う。基本的に前後の脈略はないし、ないほうがおもしろいとされた。というわけで、用例を書こうにも書きようがない。すみません。

【サ行から始まる死語】

3高(さんこう)

男の「収入と学歴と身長」の三つが、いずれも高いこと。女性にとって「理想の結婚相手の条件」とされた。男性が外で働き、女性が家を守るという役割分担意識が強かった時代ならではの言葉。

用例は「私、きれいになって絶対に3高の男、つかまえてやる」。

たぶん現在も重要な要素なのだろうとは思うが、バブル期とは違いそういうことを露骨に口にすることははばかられるようになったのだと思う。

ちなみに「座高と血圧と血糖値」なら、筆者も現役バリバリの「3高」なのだが。

【関連語】 タカビー

サンキュー・ベリマッチョ

もちろん「サンキュー・ベリマッチ」の意味。ちょうど、「ムキムキマン」とかが流行って、「マッチョマンって、なんかおもしろいよね」みたいな空気があったのだろう。

用例は「係長。コピーとっておきました」「あっ、サンキュー・ベリマッチョ」。言ってみればただのオヤジギャグ。さらにオヤジ度が増すと「あっ、三球・照代」となる。ちなみに「三球・照代」とは「地下鉄の電車はどこから入れるの? それを考えると一晩中寝られないの」というフレーズで一世を風靡した伝説の夫婦漫才コンビ、春日三球・照代(かすがさんきゅう・てるよ)さんのこと。

サンキュー・ベリマッチョマン」と伸ばす人もいた。

「篠沢教授に全部」

76年から92年までTBS系列で放送されたクイズ番組「クイズダービー」から。

解答者の一人である篠沢秀夫教授の正解率は極端に低かったが、その分、倍率は高く設定された。そのため、最終問題の時点で手持ちの得点が低いチームは「篠沢教授に全部」かけて、「一攫千金を狙う」ことが多かった。

そこから転じて、「一か八か」「やけっぱち」「可能性の低いこと」「無謀な挑戦」といったネガティブなたとえにも、「一発大逆転」「果敢なチャレンジ」というポジティブなたとえにも用いられた。

たとえば「えっ、二浪なのにすべり止め受けず? アイツ、そんな『篠沢教授に全部』みたいなタイプだったっけ?」とか「えっ、武田のヤツがミス・キャンパスの女の子に告白する? それはいくらなんでも『篠沢教授に全部』でしょ」とか「おおっ、武田! お前、あの子に告白するんだって? まあ、『篠沢教授に全部』みたいなこともあるから、がんばれよ」とか。

そう言えば、著者が妻と社内結婚することが決まったとき。著者は男の同僚たちから「まさに『篠沢教授に全部』だな」と褒められ、家内は女の同僚たちから「なんでそんな『篠沢教授に全部』みたいなことするの?」と叱られたとか。

【関連語】 「はらたいらさんに1,000点」

ジモティー

地元の人」のこと。たぶん、「地元」→「ジモトー」→「ジモティー」だと思う。

用例は「へえーっ。六本木の店くわしいんだね」「あっ、私、ジモティーだから」。……やはりいくばくかの優越感が奥に秘められた言葉。

ジュル

女性があまりきれいで、唖然として、ついよだれが垂れてしまったのを飲みこむ」ことを表現した擬音語。転じてそうした容姿を持つ女性のこと。「生唾を飲む混んでしまうほどきれい」という意味の「ゴックン」に近い成り立ち。

用例は「カノジョ、かわいいねえ」「思わずジュルだね」とか。

【関連語】 ゴックン/生唾ゴックン

冗談はヨシコちゃん/冗談はヨシオ君/冗談はヨシダ君

すべて「冗談はよしてくれ」の語尾を変えただけで、意味は同じ。「冗談は吉田よしおくん」というのもあった。「冗談は吉田栄作」「冗談は吉田戦車」も使ったが、なぜか「冗談は吉永小百合」はなかったように思う。やっぱり「サユリスト」なんて人たちがいるくらい、吉永小百合さんは聖域だからかもしれない。

80年代は、グリコだとか仮面ライダースナックを食べて(いや、食べずに捨ててカードだけ取る子どもが多くて社会問題になったんだよね)育った世代が、大人の仲間入りをした頃。で、言葉にもいろいろと「オマケ」をつけるようになったのだと思う。あっ、この解説は、オマケというより、余計か?

「消防署のほうから来ました」

いわゆる「死語」とはちょっと違うかもしれないが、当時流行った話なので紹介する。

制服らしきものを来た人が家に突然現れて、「消防署のほうから来ました。おたくの消火器ですが使用期限を過ぎています」みたいな話をする。そうすると誰だって大変だと思い、新たな消火器を買う。

ところが消防署員のフリをした人は、消火器を売りつける詐欺師。だが「消防署のほう」の「ほう」とは「方向/方角」のことなので、ウソはついていないというのが詐欺師の言い分というか逃げ口上。

今の振り込め詐欺と違い、消火器なんてたかだか数千円のものだったし、一応逃げ口上も用意されていたから、昔の詐欺はかわいかった気がしないでもない。

「詐欺の古典的名作」との呼び声も高い。

女子大生ホイホイ

女子大生に人気のあったトヨタ・ソアラのニックネーム「まるでゴキブリホイホイのように、置いておくだけで女子大生が入ってくる」ことから。座布団一枚! ホンダのプレリュードも、それに近かった。

筆者が乗っていた中古のいすゞ117クーペなんて、見向きもされなかった。だけど2017年の夏、トヨタが運営するお台場のメガウェブの「ヒストリックガレージ」で117クーペが展示されていて、なんだか非常に嬉しかったし、トヨタもいい会社だなあと思った。すみません、個人的な話になって。

【関連語】 ハイソカー

しょぼい/ショボい

「しょぼくれる」の「しょぼ」に「い」をつけて形容詞化したもの。「情けなくなるくらい少ない」「セコい」「なんとも冴えない」「あまりに低レベルで役に立たない」といった否定的な意味全般で使われた。

用例は「忘年会が焼き鳥屋なら、まだいいよ。ウチなんて会議室でほか弁だもん。しょぼすぎるでしょ」とか。

しょぼくない?」という同意を求める疑問形もよく用いられた。「臨時ボーナス支給って言うから、どんだけでるのかと思ったら、一律2,000円だって。しょぼくない?」とか。

感嘆符的にも使った。「えっ、1万円のコースで料理これだけ? しょっぼーっ」とか。

世の中全体が浮かれていたバブルのころだからこそ、逆に存在が際立った言葉。

ズッコンズッコンする

(基本的には)男と女が気持ちよくなる行為をすること。「パッコンパッコン」や「バッコンバッコン」よりも荒々しさと情念が感じられる。それがどうしたと言われそうだが、海外単身赴任から一年ぶりに帰った夫と奥さん、または服役から帰ってきた男と内縁の妻は、やっぱり「パッコンパッコン」や「バッコンバッコン」じゃなく、「ズッコンズッコン」な気がする。

用例は「はい、部長。遠距離恋愛のカノジョが泊まりに来て、週末はずっと家にこもってズッコンズッコンしていました」。やはりこの場合は、「パッコンパッコン」や「バッコンバッコン」ではない気がする。

【類義語】 よろしくする ニャンニャンする パッコンパッコンする チョメチョメする ご休憩する

スッチー

「スチュワーデス」の略称。現在では「スチュワーデス」も死語かもしれない。「女性客室乗務員」「女性キャビンアテンダント」「女性フライトアテンダント」のこと。ちなみにかつては「エアホステス」「エアガール」と呼ばれた。

この言葉を広めたのは(もしかしたらつくったのも)、間違いなく作家の田中康夫さんだろう。美人が多く、華やかなイメージがありながら、上品なマナーも身につけていて、知性があるということで、当時は「合コンしたい職業ナンバーワン」だった。あと、制服もポイントをアップさせる要因の一つだった。女医とかナースとか、日本人の男って、全体的に「制服フェチ」なところがあるし……。

用法は以下の通り。

男A 「あのさ、今度の木曜日、合コンなんだけど」

男B 「あっ、オレ、残業だから。パスね」

男A 「そっか。相手はスッチーだったんだけど

男B 「なんでスッチーだって、先に言わないんだよ。行く行く! 残業、ブッチして行く!」とか。

かつては「高嶺の花」どころじゃなかった。なんたって高度9000メートルくらいだからエベレスト超えだもの。

ところが新卒採用が減って高齢化が進み、格安航空会社との対抗上、アルバイトや外国人のフライトアテンダントが増え、しかもじつは結構過酷な労働条件であることが判明したため、かつてほどのブランドイメージはない。

【関連語】 デパガ

スネークアウトする

こっそり抜ける」「誰にも知られずに逃げる」。こちらは「フェイドアウトする」と同様に、大学の講義などよりもパーティーなどから抜け出す際に用いられた。

たとえば「ねえねえ。こんなパーティー、ふたりでスネークアウトして、どっかいかない?」とか。

この場合の「スネイク」とは「snake」、つまりヘビ。ヘビがするするっと抜ける様子にたとえたもの。

【関連語】 バックれる エスケープする フェイドアウトする トンズラする フケる

せば!

別れのときの挨拶。「では(また)!」の意味

でもひとこと言わせてもらえば、「母音だけあってりゃ、子音なんかどうでもいいのか!」という憤りを覚える。子音の気持ちも少しは考えてほしい。

用例は「えっ、もう帰るの?」「今からバイトなんだよ。せば!」。

アイルトン・せば!」という言い方もあった。もちろん当時絶大な人気を誇っていたF1レーサーの故アイルトン・セナからの転用。

粗大ゴミ

地球温暖化や環境問題を考えるとき……という話ではなく、「休日、どこに行くわけでみなく、家のリビングルームに寝そべって、テレビを見ながらグータラしているだけのオトーサン」をこう呼んだ。体が奥さんや子どもたちより大きく、役に立たずに場所だけとることから「粗大ゴミ」。まさにいい得て妙。

「亭主元気で留守がいい」というキャッチフレーズのキンチョーのCMが流行したのは1986年のこと。

ちなみに、現在社会では「主人在宅ストレス症候群」なんていうのがあるらしい。……あっ、書かなきゃよかったかな?

そんなバナナ

「そんなバカな」からの転。言ってみればただのダジャレだが、若い人が口にするとオヤジたちは懐かしがってくれるかもしれない(保証はできない)。

用例は「えーっ、締め切りは昨日? そんなバナナ!」。……仕事を一発でなくすこと請け合いである。

そんな若菜」というのもあった。若菜というのは80年代に阪神タイガースが活躍した捕手。

そういえばお笑い芸人のゴー☆ジャスさんの「そんなバハマ!」も、これと同じパターン。デンジャラスさんなら「そんなオバマ!」か?

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2) 画面上のほうのメニュー欄の「死語辞典」にカーソルを合わせると、年代ごとの死語がモロ見えになります

3) 画面右側の「検索機能(虫眼鏡マーク)」に知りたい死語を打ち込むと、バッチグーな答えが得られます。

4) 世代が違う方とのコミュニケーションギャップも、パーペキに埋められます。飲み会が「どっちらけ~」になることも避けられます。

5) 死語の解説は、管理人の独断により行っています。偏りは重々承知の助。どうぞ許してチョンマゲ! (間違いのご指摘はお待ちしております)

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