
テクノロジーの最先端都市、カリフォルニア州のシリコンバレー。でもそこから南に1時間車を走らせた「サリナス」という町にはまったく異なる風景が広がります。
そんな「知られざるアメリカ」の魅力を海外書き人クラブ会員の髙田里佳子がお伝えします。
サリナスは「世界のサラダボウル」と呼ばれる農業地帯。レタスやイチゴ、アーティチョークなどの野菜の生産が盛んです。畑で働くのは主にメキシコなど中南米からの移民たち。夏の収穫期には、朝早くから荷台に簡易トイレのついたバスで畑に向かい、収穫作業に精を出しています。

当然街にはメキシコ文化が溢れ、アメリカにいながらにして異国情緒が楽しめます!
まさに「リトルメキシコ」なアリサル地区へ!
そんなサリナスの東部にあるアリサル地区は「リトルメキシコ」とでも言うべき、メキシコ系の移民が多い街。かつて治安が悪かった時代もあったようですが、私はこの地区が好きです。
アメリカの住宅街が静かで整然としているのに対し、この地区は、軽快なメキシコ音楽を大音量で流す車が行き交い、露店やフードトラックでにぎわい、歩くだけで楽しくなります。
時にはメキシコの伝統的なお祭りも開かれ、アメリカにいながらメキシコ文化に浸かることができます。ただし日常生活でもスペイン語は必須で、私もスペイン語を学習中です。
建ち並ぶお店も独特。通りで目立つのがドレスのブティックです。メキシコでは、子どもを着飾って成長を祝う文化があります。生まれた赤ちゃんが洗礼式で着る白いドレスや、3歳、9歳になった時に教会で着る男の子のスーツや女の子のドレスが売っています。

「キンセアニェーラ」と呼ばれる女の子の15歳のお祝いでは、女の子たちがお姫様のようなドレスを着ます。日本でいえば着物屋さんで七五三や成人式の着物が売っているようなものでしょうか。親が子どもの成長を喜ぶのは世界共通ですね。
また駄菓子屋さんには色とりどりの「ピニャータ」と呼ばれる紙製の人形が吊るされています。

「ピニャータ」の中にキャンディなどのお菓子を詰め、ピクニックや誕生日会などではまるで「パン食い競争」のように上からひもで吊るしたものを「スイカ割り」のように目隠しをした子供たちが棒で叩いて割り、出てきたお菓子を競って集めます。手作りの様々なキャラクターの「ピニャータ」がずらりと並んでいます。

フードトラックで「はしごタコス」を楽しむ!
そんなサリナスの名物、タコスをいただいていきましょう。内にはもちろんおいしいメキシコ料理のレストランがたくさんありますが、町に停まっているタコストラックで食べると、数ドルからで安く食べられます。
まず訪れたのが赤い外装が目を引く「キオスコ・タキエラ」というトラック。

タコスにのせるお肉は豚肉、牛肉、鶏、モツなど様々な種類から選べますが、私は「アサダ」(牛肉)と「パストル」(マリネした豚肉)を選びました。

3ドルずつで合計6ドルでした。小さなコーントルティーヤに肉と刻んだ玉ねぎとパクチーを載せた、シンプルなタコスで、おいしかったです。
2軒目はその隣に停まっていた「オリーブ・タマレス」というトラックでいただきます。

ここでは「タコス・アル・バポル」という蒸しタコスを注文。肉は「カルニタス」(ほろほろに細かくされた豚肉)をチョイスしました。しっかり味のついたお肉が入ったタコスの上に、にんじんや赤と緑のサルサソースがかかっていて、少し辛めでした。

ここではもう1品、「ゴルディタス」を注文。揚げた厚めのトルティーヤに、ポテトや豆、チーズなど様々な具が挟んであります。こちらの肉もカルニタスにしたつもりが、チャチャロンと呼ばれる揚げた豚肉の皮が入っていました。こちらは辛くなく、中に入っている具材の味や、トルティーヤのかりっと感やもちっと感が味わえました。
飲み物はパイナップルのアグアフレスカスというドリンクを注文。

パイナップルの繊維が入っているくらいフレッシュなジュースでした。
食後のデザートは「変わり種アイスクリーム」
食後のデザートを求め、ラ・ミチョワカナ・プラスというかわいいアイスクリーム屋さんに行ってみましょう。人気のアイスクリーム屋で、サリナスで数店舗展開しています。

どの店舗も暑い日や休日は大行列。ココナッツやグアバといった南国フルーツのアイスクリームから、アボカドやテキーラ味など、変わり種もあります。
今回は一番人気、マンゴーにチリがついたアイス「マンゴー・コン・チリ」に挑戦してみたいと思います。

辛いアイスなのかと思いドキドキしながら食べると、辛さや甘さよりもしょっぱさや酸っぱさを感じました。例えるとカクテルのマルガリータのような味で、そこに角切りのマンゴーが入っていておいしかったです。
また「ケソ」(チーズ)のアイスクリームもいただきました。

まろやかな味わいほんのりとチーズの味がしました。
中南米からの移民たちは現政権から厳しい視線を向けられています。彼らの存在がなければこの「世界のサラダボウル」は成り立ちません。移民たちの豊かな文化はサリナスという町をより色鮮やかにしています。
アメリカにいながらにしてメキシコの雰囲気が楽しめるサリナス。サンフラシスコ近辺にご旅行の際はぜひ足を延ばしてみてください!
(文・写真 髙田里佳子)