バリ島の知られざる沐浴「ムルカット」の謎に迫る!

パリ島の人たち

バリ島での暮らしの楽しみのひとつはよく晴れた日の「ムルカット」です。聞いたことがない方も多いと思いますが、じつは旅行者にも人気のアクティビティー。海外書き人クラブ会員、バリ島在住のライターくにさだ美彩子がご紹介します!

ムルカットとはなんぞや?

「ムルカット」は聖水による浄化(デトックス)の儀礼のことです。

ムルカットには3種のタイプがあります。

① 浄化や治癒の力があると認められた滝や湧水で行うもの。

② 川や海で行うもの。

③ 高僧がマントラを唱えながら作った聖水で、主に儀式や個人の通過儀礼で行うもの。

その中で観光客も体験出来るのが①になります。

水の信仰が息づく島、バリ

(水の神様に捧げられたお供物。バリの人達は1年365日、地元の方々のボランティアによって掃除、供物の奉納がなされています)

現在は「バリヒンドゥー」と呼ばれていますが、かつてはバリの宗教は「アガマティルタ(Agama Tirta)」と呼ばれていました。

日本語に訳すと「水の信仰」という意味です。

地球を循環し私たちを生かしてくれる水は

命のみなもとであり、人間と自然を繋ぐ存在だとバリ人は言います。

水には特別な力があるとする「水の信仰」は、昔から今に続く伝統であり、バリ人の信仰の根幹にあるものです。

ネガティブな感情を丸ごとデトックス!ムルカットの効能

(子どもの大人もよく笑うバリの人々。座右の銘は”楽しいのが1番大事”です)

私たちの心身の病の原因は、過度な不安や嫉妬などのネガティブな感情や、過去生からの因果であるとバリ人は考えています。

繰り返しネガティブな感情に襲われてしまう時、人は

・物質世界と精神世界のバランス

・人間と神、自然、動物とのつながり

・他者とのつながり

を失った状態にあると言います。

ムルカットでそれらが取り戻されニュートラルになると「よい人生とは何か」を考えられるようになります。

ですが人間はもろく、自分を律することや、心を見つめることを怠る癖があるので、頻繁にムルカットをする必要があるそうです。

私は見た!ムルカット場の奇跡

(メンゲニン寺院のムルカット場。こちらは滝行タイプと吹き出し口タイプの両方を備えたハイブリッド型です)

バリ島内には無数のムルカット場があります。

主に、滝行タイプ、吹き出し口から湧き出る聖水を浴びるタイプの2種類がありますが、滝行タイプは頚椎骨折の危機を感じるほどの水圧のおかげで、ムルカット後のスッキリ感はハンパないのでおすすめです!!

もう1つの吹き出しタイプは、主流からいくつかに分流された水が吹き出しており、吹き出し口によってムルカットの目的(病気を治したい人専用、葬儀後の穢れを浄化したい人専用など)が違っています。

どこのムルカット場にも”スダマラ”(治癒力のある水)と呼ばれる水があり、心身と精神の病、そして除霊に効果があるとされています。

「ある日足が麻痺したように動かなくなった」というおじいさんが、家族に抱えられてスダマラの滝壺に浸かっていました。

突然、おじいさんが「足がぁ〜動くううう〜」といい、家族の手を離しよろよろしながら自分の足で立ち上がったのです。

クララが立った姿に腰を抜かすくらい驚いた、ハイジとおんなじの気持ちをハラで理解した瞬間です。

その後、そのおじいさんは歩いて帰って行きました。

信じるか信じないかはあなた次第です。

私のおすすめ「プラ・ベジ・サパット」で至福体験!

(ここまで来たら、もう喧騒は聞こえなくなります。非日常への入り口です)

こちら、我が家からバイクで5分で行ける、全く無名のムルカット場です。

が、ミニジャングルの中で優しい水に抱かれる心地よさを漫喫できる、素晴らしいムルカット場でございます。

ウブドから車で30分くらい北上した、テガララン地区のサパット村にあります。

プラ・ベジは「水源を祀る寺院」という意味で、バリ中の水源のある場所に建立されています。

大通りから左折した「ホンマにここで間違いない?」と道行く犬に聞きたくなる普通の住宅街を直進すると、おもむろにチケット売り場が現れます。

東京の東陽町に住んだことのある受付のおじさんと、おじさんは日本語、私はインドネシア語とバリ語のチャンプル会話を楽しみます。

お互いゲラゲラ笑っていますが、本当に意味が通じているのかはナゾ!です。

でも、バリ島での暮らしはこんなひとときが楽しいのです。

(赤いシャツのおじさんがMr.東陽町。みんな爆笑していますが、何がそんなに面白かったのか?全く記憶にございません。入場料は約300円。収益はこのお寺の維持費、電気代や供物の購入などの経費にあてられます)

階段を下って行くと、ムルカット場の下にある川の水の音が心地よく耳に届きます。

「水が私を呼んでいる〜ホホっ〜呼んでいる〜ヨ〜ロレイヒー」

上機嫌でヨーデルを口ずさむ私を看板がお出迎え。

目的地まではもうすぐです。

更に下ると眼下には、南国の植物が好き勝手に広がるミニジャングルのそばに鎮座する寺院が出現!!

アンコールワット(規模の差には目を瞑ってくだせぇ)を最初に発見した人も同じ気持ちであったであろう、はやる気持ちを抑えつつ更に下り、目的地に到着です。

神様へのお祈り。日常を切り離すスイッチ

(ミニジャングルの中にひっそり立つこの建物が、水源を祀るお寺です)

まずはここで神様にご挨拶をし、ムルカットの目的が果たせるようにお祈りをします。

ムルカットの前に必ずお祈りをしますが、この行為が日常と自身を切り離すスイッチとなっている気がします。

(水源の神様を祀る祠。こちらにお供物を奉納し、敷地の外でお祈りします)

(神様に捧げる供物”チャナン”。一応手作りです、おほほほ)

お祈りを済ませると、さっそく生命力溢れるジャングルに囲まれたムルカット場へレッツラゴー!!

龍神さまの水が沁み入る優しいムルカット

(龍神さまから溢れているのは、あの、おじいちゃんの奇跡を起こした水”スダマラ”)

龍神さまの口から溢れる優しい水はいつもと変わらず心地よく、皮膚の中へスゥ〜っと沁み入ってくるようです。

浅瀬のプールに腰を降ろし、目の前に広がるジャングルを見ながら水が私の中に沁み入るのを味わいます。

(こんな晴れた日のムルカットは最高です)

ここでのムルカットは滝行タイプのように「うぉ〜スッキリ!!」という激しめの爽快感は味わえませんが、その代わり日常の喧騒から離れ、深いしじまの中に身を置くことでしか味わえない至福を味わえます。

ジャングルから聞こえる鳥の声、揺れる木々の間から溢れる陽の光りの粒、濡れた体を撫でる風。

それらを感じ入っていると、どんどんと五感が研ぎ澄まされて行き、周りの大自然との堺がなくなっていくような感じがします。

私はこういう時間を過ごしたくてバリ島で暮らしているんだなぁと、再認識します。

こんな手付かずの自然の中で、深い呼吸をして「ヒトも自然の1部だ」と感じる体験もまた、贅沢なバリ島での時間の過ごし方だと思います。

(帰る前に再度お祈りします。お花とのお香を使ってお祈りするのがバリヒンドゥーの美しいところです)

スッキリ体験ができるムルカットへ行ってみよう。

(水の神様を祀る祠の裏には、”スダマラ”を分け与えてくださる天女さまがいらっしゃいます)

私の住んでいるウブドという地域のムルカット場のご紹介になりましたが、ほかの地域にも素敵なムルカット場があります。

先述したようにムルカットはツーリストにも人気があり、誰でも体験することが出来ます。

とはいえ、いきなり観光客だけで突撃するのは作法がわからず楽しめないでしょう。

儀礼であるムルカットの前後には、バリヒンドゥ式のお祈りをしなくてはいけませんし、そのためのお供物も必要です。

必ずバリ人のガイドと一緒に行きましょう。ムルカットに行きたいと言ったら、ほとんどのガイドは喜んでセッテイングしてくれるはずです(バリ独自の文化に興味がある人には過剰なくらい良くしてくれます)。ガイドさんの行きつけのムルカット場を案内してくれるかもしれません。

バリに来られたらぜひ時間を作って「バリでの贅沢時間」を過ごしにムルカットへ行ってみてください!!

【ムルカットの際の注意事項】

ムルカット場に限らずバリの聖地は生理中の女性は立ち入り禁止です。

また正装をする必要はありませんが、露出の激しい服装は避け、ガイドの指示に従ってくださいね。

〈文・写真 くにさだ美彩子〉

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