【フィリピン在住ライター直伝】IS(イスラム国)はなぜミンダナオ島を狙う? 3つの歴史的背景

「イスラム国」の旗

キリスト教徒の多い国フィリピン。そのミンダナオ島で、なぜIS(イスラム国)が活発に活動しているのか。その理由を、海外書き人クラブ会員・フィリピン在住のOkada M. A.が解説します。

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フィリピンは、スペインの旧植民地がほとんどそうであるように、ローマン・カトリックのキリスト教国。また、その後米国の植民地が長く続いたため、英語が公用語です。このように欧米の文化の影響も強く、アジアにありながら欧米キリスト教国に非常に近い国であるとの印象があります。

ところが今、ISが標的としているミンダナオ島には、同じフィリピンにありながらまた違った事情があり、それが現在、ISとフィリピン軍との激しい戦闘が続いている遠因にもなっています。今回は、その三つの代表的な歴史的「事情」をレポートします。

「イスラム国」の旗

「イスラム国」の旗。パブリック・ドメイン

 

 

1 15世紀のミンダナオ島周辺にイスラム教の国々が成立

14世紀後半、現在のフィリピンの西部にあるスールー諸島にアラブ人の商人と共にイスラム教伝道師が渡って来て、先住民へのイスラム教の布教が進みました。15世紀中頃にはその地域にアラビア語を言語とするスールー王国が成立しました。それより遅れてミンダナオ島にも、イスラム教のマギンダナオ王国やブアヤン王国が生まれました。

マギンダナオ王国とスールー王国は政略結婚によって同盟関係を結ぶような間柄でした。

これは17世紀にフィリピンが国家として成立するよりも、ずっと前のことです。

スールー王国の位置を示す地図

スールー王国の位置。パブリック・ドメイン

 

マギンダナオ王国の位置を示す地図

マギンダナオ王国の位置。パブリック・ドメイン

 

2 スペインによる併合後も残るイスラム教地域

16世紀後半にスペイン人が襲来し、セブ島や現在のマニラがあるルソン島を征服していきましたが、スールー王国はスペインの侵入を許しませんでした

マラウィ(現在のISとフィリピン軍との激戦地)を首都とするマギンダナオ王国はスペインと戦いましたが、ついに19世紀には併合されてしまいます。

スペインはスールー諸島からミンダナオ島に至るイスラム教の地域に対する領有権を国際的に主張しましたが、すべてを実効支配することはついにできませんでした

スペインとイスラム勢力の紛争時のスペイン側のフィリピン人兵士

スペインとイスラム勢力の紛争時のスペイン側のフィリピン人兵士。パブリック・ドメイン

 

3 フィリピン共和国成立後も続く武力衝突

20世紀直前に、スールー王国は米領フィリピンに併合され、最終的に1910年代に一旦はイスラム勢力はアメリカ軍に制圧されました。

しかし、第二次世界大戦後フィリピンが独立すると、政府は国民を統合し単一国家を作ることを目指したため、植民地であった当時でもイスラム文化を守って暮らして来たミンダナオ島の人々は、これをキリスト教文化への同化政策と見て反発し続けました。

1950年代後半からフィリピン政府はイスラム勢力と交渉し、一夫多妻や離婚を禁ずるフィリピンの法律がイスラム文化で暮らす人々には適用されないなどの合意が成立。しかしイスラム教徒とキリスト教徒との敵対は収まらず、1970年代からはフィリピンからの分離独立を求めるモロ民族解放戦線(MNLF)とフィリピン国軍との武力衝突が現在まで続くこととなります。

モロ民族解放戦線の旗

モロ民族解放戦線の旗。パブリック・ドメイン

 

つまり、この三つの歴史的な「事情」が示すように、フィリピンの成立よりずっと前から現在まで、現在の紛争地であるマラウィのあるミンダナオ島西部には、キリスト教国としてのフィリピンへの併合をずっと拒み続けて来た歴史があります。それが、ISがミンダナオ島を標的とする理由の一つです。昔のイスラム教国(マギンダナオ)の首都であったこのマラウィで戦闘が行われているのにも、その象徴的な意味がある訳です。

また、旧スールー王国は、現在のインドネシアやマレーシアの一部もかつては領土としていました。イスラム教国であるそれらの国々とはイスラム文化を通じてずっと繋がりがあり、武力や物資の支援も容易に行われやすいのです。

ここに単なる小規模のテロリストと米国の支援を受けた大規模なフィリピン国軍との戦闘が長期化する理由があり、そこにまたISの狙いもあるのです。

 

※参考

http://www.philippine-history.org

http://www.oxfordbibliographies.com/view/document/obo-9780195390155/obo-9780195390155-0102.xml

※今回の写真はすべて「パブリックドメイン」のものを使用しています。

【文・ Okada M. A.】

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