【柳沢有紀夫の視点】「世界の都市総合力ランキング」って誰のためのもの?

浅草仲見世通り

「森記念財団都市戦略研究所」が「世界の都市総合力ランキング」を発表しました。だけど……何なんですかね、これ? 今回はこのランキングの疑問点を挙げてみました。

こんにちは。海外書き人クラブの会員、オーストラリア在住の柳沢有紀夫です。

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発表されてから1週間以上経っての記事ですみません。言い訳になりますが、発表された直後にもこのランキングを見ていて、記事にしようとは思っていたのです。以前、【「世界一住みやすい都市ベスト10」2つを比較してみる】という記事に「日本人の基準で「世界の住みやすい都市ランキング」をつくって発表すると、彼我の違いがクリアになっておもしろい」と書いた私としては、このランキングの発見は歓びであるとともに、恥ずかしいことでもありました。もう9年も日本人がつくったランキングがあるのに、気づかなかったのか、と。

ただ……どう記事にしたらいいのか考えてもなかなかまとまらず、一週間が経っていました。まとまらなかった理由は……このランキングがよく理解できなかったのです。

で、一週間経っても理解できないものはきっと今後も理解できないだろうという判断のもと、「理解できないぞー」という記事にすることにしました。

「やっぱり柳沢有紀夫ってアホじゃん」と思っていただいても結構です。

まあ、とにもかくにもランキングのトップ10と、その他の日本の都市の順位を見てみましょう。

 

  • 1位 ロンドン
  • 2位 ニューヨーク
  • 3位 東京
  • 4位 パリ
  • 5位 シンガポール
  • 6位 ソウル
  • 7位 アムステルダム
  • 8位 ベルリン
  • 9位 香港
  • 10位 シドニー
  • 26位 大阪
  • 37位 福岡

 

「おいおい、横浜や名古屋、京都や神戸はどこにいったんだ?」という声が聞こえてきそうですが……後で説明しましょう。

さて、いよいよ、この調査への疑問点です。

 

1 「都市の総合力」ってなんだ?

最初の疑問がこれです。本当になんなんですかね、「総合力」って。

これがサッカー選手とかサッカーチームならわかります。「シュート力」とか「パス能力」とか「ドリブル突破力」とか「対人守備力」とか「一対一の守備力」とか「戦術理解力」、その他諸々を合わせた「総合力」だと。

でも、「都市の総合力」って何ですか?

もしかしたら古代ローマ帝国が生まれる前のように、都市間戦争を呼びかけているのかと思いましたが、現代の戦争は都市ではなく「国」同士の戦いですよね。

「世界の都市総合力ランキング」のサイトにはこんな説明がありました。

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地球規模で展開される都市間競争下において、より魅力的でクリエイティブな人々や企業を世界中から惹きつける、いわば都市の“磁力”こそが「都市の総合力」であるとの観点に立ち、世界の主要都市の総合力を評価し、順位付けしたものである。

------

だったら「都市の総合力」などという抽象的な表現ではなく、そのままズバリ、「より魅力的でクリエイティブな人々や企業を世界中から惹きつける都市」ランキングでいいのではないか。長すぎるとしたら「クリエイティブな人々や企業を惹きつける都市」ランキング、さらに短縮するとしたら「クリエイティブな都市」ランキングでいいでしょう。

これでようやく「住みやすい都市」と同じくらいわかりやすくなりました。しかしなんで日本のこういう発表っていうのはわざとわかりにくく書くんですかねえ。

 

2 たった42都市の調査をして意味があるのか?

次の疑問がこれです。「世界の都市総合力ランキング」の調査対象はわずか42都市! たった42都市です。

その選考基準は、説明によると他の調査でトップ10に入ったところや、トップ10の国の主要都市や、取りあげるのに適当だと判断した都市とのことです。でも、この「主要都市」の選考基準がかなり恣意的な感じがしました。

たとえばイタリアで唯一選ばれているのが「ミラノ(32位)」。はい、「ローマ」は対象外です。まあ、ミラノは「ファッションの都」なので「クリエイティブ」なのかもしれませんが……。

ブラジルも「サンパウロ(39位)」のみで、「リオデジャネイロ」は対象外。1年前にオリンピックを開催した都市が無視されています。

オーストラリアも「シドニー(10位)」だけで、「メルボルン」は対象外

これがイギリスのロンドンとか、フランスのパリのように、「巨大都市一つ+その他地方都市」という図式であればわからないでもないですが……。

もう一つ気になるのが、アメリカで「シアトル」が入っていないこと。シアトルといえばマイクロソフトとアマゾンというクリエイティブ感がハンパない企業が誕生した街。スターバックスなどのシアトル系コーヒーの地元でもあります。アメリカの中ではグーグル、フェイスブック、ヤフー、アップル、インテルなどを生んだシリコンバレーを要するサンフランシスコに次いでクリエイティブな街だと思うのですが……。

 

3 日本からは東京、大阪、福岡だけ?

そうなんです。最初のほうで「ランキングのトップ10と、その他の日本の都市の順位を見てみましょう」と書いたのに、東京と大阪と福岡の順位しか載せなかったのは、この三都市しか対象になっていないからなのです。

おそらく日本第三の人口を誇る横浜は「大東京圏」、そして京都と神戸は「大大阪圏」という風にくくっているのでしょう。でも名古屋は?

名古屋といえば「ひつまぶし」「名古屋コーチン」「味噌カツ」から「天むす」「小倉トースト」に至るまで、非常に独創的な食べ物を生み出してきたクリエイティブシティー……なんて書いていると怒られそうですが、世界のトヨタのお膝元。そしてリニアモーターカーを開発しているJR東海の本社がある街なんですが……。

 

というわけで、あまり納得できないランキングでした。

ちなみにみなさんは「世界でいちばんクリエイティブな都市」と訊かれたら、どこを思い浮かべますか? 私はやっぱりシリコンバレーを有するサンフランシスコかな?

 

「世界の都市総合力ランキング」(森記念財団都市戦略研究所)

関連記事【「世界一住みやすい都市ベスト10」2つを比較してみる】

も、ぜひどうぞ。

【文・柳沢有紀夫】

(「海外在住ライターを使ってみたい」と思われている方。「海外在住ライターになりたいと思われている方。耳寄りな情報があります。ぜひこのページの下のほうまでご覧ください)



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